

面接で、短所などを正直に答えていいかは気になりますよね。これに関しては、科学的観点からさまざまな不都合が判明しています。
採用担当者の考え方
採用担当者というものは、必ず「ありのままの皆さんを面接で見せてください」と言う。「嘘をついてもわかりますので、正直に話してください」と採用担当者は続ける。採用担当者の立場からすると、面接で嘘をつかれるのは困るのである。だからこのようなことを言うのだ。
当然ながら正直に答えてもらった方が採用担当者のメリットは大きい。しかし、これはあくまでも採用担当者側のメリットに過ぎない。
正直に応募者が自分の短所(たとえば、「朝起きるのが苦手です」「時間にルーズです」「体力がありません」など)を答えたとき、採用担当者が「この人は正直者で信頼できる」と高評価するかといえば、高評価どころかマイナス評価をくだすケースがほとんどだ。
採用担当者が応募者に正直になってもらうためには、正直に話したこと自体を評価すべきだ。もしその内容によりマイナス評価を与えるなら、応募者は正直に答えるメリットはないことになる。
したがって、応募者は「自分の短所を正直に答えない」が最善の行動となる。「仕事に頑張りすぎてしまうことが私の短所です。プライベートも大事にしなければといつも反省しています」のような、「仕事をしっかりやること」をほのめかすような短所がベストとなってしまうのだ。
つまり、応募者が正直に短所を答えないのは、採用担当者側の問題となる。「あなたの短所を正直に答えてください。あなたが言った短所をマイナス評価することはありません。むしろ正直に答えたことを信頼の証として評価します」と明確に宣言すべきである。そうしないのであれば、応募者側が正直に答えないことを認めているようなものである。
応募者が自分の短所を正直に話すことには、メリットがなさすぎる。採用担当者が正直に答えてほしいと思うなら、正直に話せる環境を作るべきである。

人は嘘を見抜けるのか?
「面接官は人を見るプロだから嘘を見抜くことができる」と言う人がいる。しかし、それは思い込みに過ぎない。むしろ、科学的にわかっていることは、「人は嘘を見抜けないという」真実だ。
南カリフォルニア大学ではこんな実験が行われた。役者が講師を演じ、嘘が満載の全く無意味な講義を行ったのだ。偽造の専門用語を使いながら、中身はまったくのデタラメな内容だ。さて、その講義は聴衆からどう評価されただろうか。高評価、低評価、どちらの結果になったと思うだろうか?
実は、答えは高評価だ。ありもしない嘘の理論を、俳優の見事な演技により聴衆は信じたのだ。ちなみに、演じた俳優の名前がマイケル・フォックス(バックトゥーザフューチャーの俳優とは別人)だったことから、Dr.fox効果と言われている。
他にも嘘を見抜けるかという研究があるが、嘘を見抜ける確率は54%だと判明している(Charles F. Bond, Jr.Bella M. DePaulo「Accuracy of Deception Judgments」)。つまり、コイン投げをするようなものであり、あてずっぽうとほぼ変わらない。心理学的に嘘を見抜くことは非常に難しいとわかる。

嘘をつくかどうか、結論は決まっている
以上をまとめると、
①正直に自分の短所を述べるとマイナス評価をくだされる
②面接官は嘘を見抜けない
となる。したがって、応募者側に自分の短所などを正直に答える理由はないのではなかろうか? 嘘をつくべきというより、正直に答える理由がない。
「嘘をついて採用された場合、入社すると不幸になる」という指摘もあるだろうが、嘘をつこうがつかまいが、不幸になることはある。正直、入社後に不幸になるかどうかと、「面接時に嘘をついた」は因果関係が薄いだろう。
答えてはいけない短所
原則、仕事に影響が出る短所を言ってはいけない。下記のような回答は、マイナス評価となる可能性が高い。
①朝、起きるのが苦手
②過去にとりつかえしのつかない失敗をした
③時間にルーズ
④体力がない
⑤ストレス耐性がない
⑤勉強が苦手
⑥パソコンが苦手
⑦人付き合いが苦手
短所を聞かれたときのかわしかた
下記のような短所であれば、結果的に「仕事をしっかりとやる」ことをほのめかすことができる。
①頑張りすぎるため、ワークライフバランスが崩れがち
②完璧主義すぎる
③神経質で細かい部分まで気になる
④頼まれると断るのが苦手
