

この授業では、中途採用でどのような筆記試験が実施されるのかをまとめています。また、対策のポイントをわかりやすく解説します。
目次
筆記試験の種類と特に重要な試験
中途採用における筆記試験は、新卒採用で実施される筆記試験と大きな違いはない。一般に、以下のような試験が実施される。
①能力適性検査
②性格性格検査
③一般常識(時事問題)
④小論文
⑤企業独自試験
そして、これらの中でもやはり適性検査の実施率が高い。代表的な適性検査としてリクルート社が作成しているSPIとSHL社による玉手箱がある。これらは「国語・数学」の能力適性検査と性格適性検査のセットである。企業によっては英語が出題されることもある。
したがって、適性検査(特にSPI、余裕があれば玉手箱)の対策を行う必要がある。つまり、最も重要な筆記試験対策は、国語、数学、性格ということだ。SPIと玉手箱の対策方法については後ほど解説する。
ちなみに、なぜ国語と数学かというと、当然ながら働く上で大量の文章を読み書きすることが多く、お金の計算などはどんな組織に勤めていても必須となるからだ。性格適性検査に対しては、候補者の性格が職務適性と社風に合うかを判断するために行われる。

中途採用における筆記試験の実施率
中途採用における筆記試験の実施率は、新卒採用ほど高くない。転職エージェントdodaの調査では約半数の企業が筆記試験を実施しており、リクナビNEXTの調査では7割の転職経験者が筆記試験を経験している。
新卒採用における能力試験は入社後のパフォーマンスを予測するために行われる。科学的な観点でいえば、筆記試験、面接、インターンシップなどで入社後のパフォーマンスを予測できるかという研究が行われたが、筆記試験は面接よりも予測精度が高い可能性が示唆されている。
しかし中途採用では、入社後のパフォーマンスを推測するものとして職務経歴書が提示される。したがって、前職においてパフォーマンスが発揮されているとしたら、適性検査を実施せずとも入社後のパフォーマンスをある程度予測できることになる。国語・数学・性格などの適性検査はあくまでも仕事を遂行するうえでの一部の能力を測定しているに過ぎない。これまでに十分な実績を積んでいるなら、筆記試験を実施せずとも今後の活躍を予想することができる。
また、新卒採用では多数の候補者を絞り込む足切りのために用いられることも多い。通常採用活動は、少ない人数で多くの候補者への対応が必要なため、なんらかの手段で候補者を厳選する必要がある。その際に筆記試験が用いられるのだ。
一方で、中途採用では候補者がそこまで多くないケースも多い。候補者を絞り込む必要がないため、筆記試験を実施しないという企業もある。
しかし、候補者は少なくとも、採用可否の判断材料の一つとして筆記試験が行われることがある。

SPIなど能力適性検査の対策方法
SPIが最も出題される。そして、ベストを尽くすなら玉手箱という適性検査の対策も必要である。これらは新卒採用においても実施されるが、基本的に出題内容は同じである。SPIも玉手箱も国語と数学がメインだ。
特に対策に時間がかかるのが、SPIの非言語(数学)の試験である。推論、場合の数・確率、損益算、速度算など幅広く知識を試されるからだ。
玉手箱の数学の試験は、単純な計算問題であり、SPIほど知識を必要としないので対策にそれほど時間はかからない。とはいっても、独特な出題形式であり何度か問題を解いておかないと高得点は期待できない。
そして、SPIの非言語(数学)に関しては、一部出題範囲が異なる。転職者用のSPIはSPI-Gというものであり、非言語試験(数学の試験)において新卒採用時にはなかった「方角」「縮尺」という分野の問題が出題される。たとえば以下のような問題だ。※イメージをつかむため、実際の問題よりも難易度を落としている点に注意
【方角の例題】
A工場から北に300m進み、直角に右折して300m進むとB高校がある。一方、B高校から南に600m進むとCスーパーがある。
(問)Cスーパーは、A工場から見てどの方角にあるか?
【縮尺の例題】
(問)縮尺1/100の地図がある。この地図の5cmは実際には何kmになるか?
転職者用のSPI対策問題集も販売されているので、転職者用SPIの対策をしたい人や新卒採用時に勉強していなかった人はそれをやってもよいだろう。玉手箱に関しては新卒採用時の問題集でかなり対応できる。
SPIと玉手箱の国語の試験については、国語という問題の特性上、ほどほどに勉強しておこう。国語に関しては、普段からどれだけ文章を読んでいるかが得点に大きく反映される。まったく対策をせずにいきなり高得点を取る人も多い。ただし、知識問題は得点アップの可能性が高いので、重点的に勉強しておく。また、長文読解などに関してはある程度慣れた状態で本番に臨もう。

性格適性検査の対策方法
性格適性検査は、応募者の性格の特徴を測定するために行われる。仕事の向き合い方や人との接し方を見抜き、募集職種や社風に合うかが判断される。性格適性検査の結果は、面接の補助ツールとして使われることが多い。
性格適性検査では、以下のような問題が出題される。問題と言っても、一部の例外を除き正解があるわけではない。
【性格適性検査の例題】
以下の質問で、自分に近いものを選んでください。
A.ときには嘘をつかなければならないことがある。
B.どんな場合においても絶対に嘘を言ってはならない。
A.人生において努力が重要である。
B.人生において運が重要である。
性格適性検査の対策については、2つの方法がある。1つは、「ありのままの自分」で臨むことである。採用においては、転職者も企業もWin-Winの状況がベストだ。性格適性検査に正直に答えて、ありのままの自分を受け入れてくれた企業に入るのが理想である。
もう1つの方法は、企業や募集職種に求められる人物像から逆算することである。たとえば営業の仕事に応募しているとしよう。
【募集職種から逆算する問題】
A.いろいろなところに出かけるのが好きだ
B.外に出るのはあまり好きではない
→営業という仕事ならAと答えるべき
ただし、以下のような正解が存在する問題もあるため、そのような問題は間違わないようにする。
【正解が存在する問題】
A.自分の思ったことがつい顔に出てしまう。
B.自分の感情を顔に出さないことができる。
→感情をおさえられるBが正解
A.忍耐には自信がある
B.忍耐力に自信がない
→当然ながら忍耐力はあったほうがよいのでAが正解
したがって、現実的な適性検査の対策方法は、「ありのまま答えつつも、募集職種に関連している問題や正解が存在する問題に対してはプラス評価を得られる回答をする」となる。

一般常識の対策方法
能力・性格適性検査ほどの実施率ではないが、一部の企業で一般常識の筆記試験が出題されることがある。国語・算数・理科・社会・時事問題など、幅広いジャンルから問題が出題される。問題の難易度自体は高いものではないが、範囲が広いため対策がなかなか難しい。たとえば、以下のような問題が出題される。
【問題例】
(問)人工知能「AI」の英語表記として正しいものはどれか?
A.Artistic Interest
B.Analyze Internet
C.Artificial Intelligence
→Cが正解
(問)次の作品のうち、宮沢賢治の作品ではないものはどれか?
A.銀河鉄道の夜
B.注文の多い料理店
C.羅生門
→Cが正解。羅生門の作者は芥川龍之介
一般常識は、その出題範囲の広さゆえに最も対策が難しい。さらに出題頻度もそれほど高くない。したがって、SPIなど能力適性検査の対策が終わって余裕がある場合や、申し込んだ企業が一般常識を出題するとわかっている場合に勉強するのが現実的だ。その際には、問題集を一冊買って解くのがよいだろう。

小論文の対策方法
小論文も一般常識と同様に出題頻度は高くない。小論文では、思考力、文章構成力、与えられたテーマに関する知識などが判断される。出題されるテーマとしては、主として以下の3つがある。
①自分に関するもの(例:キャリアプラン、志望理由など)
②社会に関するもの(例:AIについて、少子高齢化、SDGsなど)
③業界や企業に関するもの(例:業界の展望、この業界の社会的意義など)
「自分に関するもの」に対しては、通常の面接の対策をしていればある程度書けるはずだ。②と③の対策として、ニュースと専門用語のチェックをしておこう。
また、小論文の書き方のテンプレート(型)を持っておくことが重要である。そのための方法としてPREP(プレップ)が使える。PREPは良いプレゼンテーションをするためのテクニックとして有名なものであるが、わかりやすい小論文を書く際にも使える。PREPは以下の頭文字を取ったものであり、この順番に話を構成すると良い。
Point・・・結論(主張や言いたいこと)
Reason・・・理由(根拠)
Example・・・例(具体的なデータや事例)
Point・・・結論(あらためて結論を述べる)
このPREPは面接でも使える汎用性の高いものである。人に対してわかりやすい説明を行いたい場合全般に活用できる。
【PREPの例】
Point・・・私は営業のスキルが高いです。
Reason・・・その理由は、人間関係を築くことと知識の習得を怠らないからです。
Example・・・たとえば、初対面の人とすぐ打ち解けることができ、業界紙を欠かさず読んでいます。その結果、社内でナンバーワンの売上を達成しました。
Point・・・したがって、私の営業スキルは御社のお役に立てると考えます。

企業独自試験の対策方法
企業によってはSPIなど一般的な筆記試験ではなく、独自試験を行う企業もある。
たとえばIT業界では、プログラミングの試験が行われる場合がある。また、出版業界の筆記試験では、出版業界に関する知識試験が行われることもある。
筆記試験ではなく面接の場にはなるが、外資系コンサルティング会社を中心に「日本のオリンピックのメダル数を2倍にするには?」「水族館の売上を2倍にするには?」など「ケース面接」と呼ばれる特殊な問題が出題される傾向にあり、専用の対策が必要となる。
特に、業界ごとに独自試験のあるなしの傾向があるため、自分が志望する業界(企業)が独自試験を行っているかを調べておこう。
