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転職と後悔
あなたのこれまでの人生における後悔はなんだろうか? 筆者の後悔といえるものは、自分の家族に対するものである。祖父や祖母、両親に対して「もっと孝行しておけばよかった」と考えることがある。筆者だけでなく、人間というものは大なり小なりなにかについて後悔しているものだ。
科学的な調査において判明していることは、人間がどんなことに対して「特に」後悔するかということだ。「やらなかったこと」と「やったこと」、私たちが後悔するのはどちらだろうか? 結論は出ている。それは「やらなかったこと」だ。
私たちは「やってしまったこと」に対して反省はするが、それは未練とはならない。「やったこと」には答えが出ているからだ。ところが、「やらなかったこと」は「もしあのときやっていたら」とその後の「可能性」を想像してしまう。「あのとき起業していたら今頃は上場企業の社長として~」など、このような「想像」が未練となるのだ。
これはキャリアについても同様である。「やりたい仕事に挑戦しなかったこと」は人生における大きな後悔となりうるのである。お金や家族など、さまざまな理由から自分の理想のキャリアに挑戦できないことは十分に理解できる。世間体や周囲との関係から、踏み切れないことには共感できる部分が多い。だからこそ、自分を押し殺して挑戦しなかったことを後悔している人がこれほど多いのだろう。
しかしだ。実はあなたは挑戦していいのである。転職という挑戦なら、自分の周囲への迷惑を最小限におさえることができる。逆に、転職という選択肢を持っていない人生は、大きなリスクがある。

会社の寿命は人の寿命よりも短い
あなたは会社の寿命をご存知だろうか? 会社の平均寿命はどれくらいかを想像してほしい。人の一生が80年ほどといわれる現在、会社の寿命はそれよりも長いか、短いか。
東京商工リサーチによるデータを見ると、驚くべきことに、会社の寿命は平均して20年強である。データの算出方法は、1年間に倒産した企業が何年続いていたかを平均している。
学校を卒業して就職した企業に、その後40年以上定年退職まで勤める気持ちでいる人も多いだろう。しかし、それが可能なのは一部の幸運な人だけなのだ。中小企業、大企業にかかわらず、勤めている企業がいつなくなるかはわからない。
企業の栄枯盛衰は、私たちが想像しているよりも早い。たとえば、経営学における調査で、現在のトップ企業が、その後10年、20年たってもトップ企業でいられるかというと、答えは多くの場合Noである。電気自動車と自動運転へのシフト傾向が見られるなかで、トヨタ自動車ですら今後どうなるかわからない。これまで築き上げてきた資産が、逆に重荷になりかねない状況だ。
IT企業トップの顔ぶれは、20年前では誰も想像できないものになっている。20年前、GoogleやAmazon.comなどの企業が天下を取ることを誰が予想できただろうか? 会社の寿命は人の寿命よりも短い。20年ほどで企業が潰れていくなら、40数年の会社人生の中で、2~3社を経験するのが普通だといえる。

転職している人の割合
それでは、転職を経験している人はどれくらいいるのだろうか? 総務省統計局のデータを見ると、男性は約5割、女性では約7割である。男性では約半数の人が、女性では大部分の人が転職を経験している。
女性の転職割合が高くなっているのは、結婚とともに離職するという過去の風習(寿退社)が影響していると予測される。
つまり、働く人の過半数が転職を経験すると考えて間違いない。
逆に、大企業や官公庁に務めている人で転職を選ぶ人の割合は約3割で、それほど転職を選ばない傾向が判明している。ただ、大企業や官公庁に勤めている人のキャリアに後悔がないかというと、そうではないだろう。現に筆者は、誰もが知る大企業で勤務していたが、結婚前に退職した。結婚した後ではさまざまなしがらみから退職できなくなると思ったからだ。家族や世間体などから、「本当はチャレンジしたいができない」と考えている大企業・官公庁勤務者は多いはずだ。
転職で満足している人の割合
転職を経験する人が過半数だとして、失敗に終わっていたら意味がない。これに関しては、厚労省の調査で判明している。転職に「満足」「不満足」のどちらが多いかというと、「満足」と答える人の方が相当に多い。その他調査を見ても、転職に対して納得している人が多いとわかる。
転職に「失敗した人」の理由
次に、「転職に不満足」と答えた人たちが、なぜそうなったのかという理由を見ていこう。多くの調査で判明している転職に失敗する理由は、大きく次の2つである。
①もっと早く転職すべきだった
②準備不足
この2つからは転職に失敗しないための教訓を得ることができる。
「もっと早く転職すべきだった」に関しては、よく知られている通り、年齢が関係している。年齢に関しては、やはり若いほど転職が成功しやすい。厚労省のデータを見ても、40歳を超えてくると、「転職に不満足」な人の割合が顕著に増えてくる。もしあなたが転職という選択肢を持っているなら、早めの検討が重要となってくる。ただ、年齢が高くなっても、ハイクラス層の転職は盛んに行われているので安心してほしい。
「準備不足」については、「安易に転職先を決めてしまった」「面接の対策ができていなかった」「資格をとっておけばよかった」などの声がある。なにごともそうであるが、最低限の準備が必要となる。

増える中小企業から大企業への転職
転職に対して、「待遇が下がる」イメージを持っている人は多いだろう。そもそも、日本において転職が活発になってきたのは、この20年ほどである。そもそも、1980年代後半のバブルと呼ばれた時代には、終身雇用をはじめとする日本的雇用が世界的に称賛をあびていた。その時代、転職をする人は「その企業にいられなくなった人」のように見られることもあった。転職に対してこのネガティブなイメージをひきずっている人もいるはずだ。実際、以前は大企業への転職は少なかった。だからこそ、「待遇が下がる」というイメージが残っている。
ところが、現在の転職市場を見てみると、このネガティブなイメージが払拭される。厚労省のデータを見ると、現在の転職では中小企業から大企業への転職が主流といえるほど増えているのだ。転職では「待遇を上げる」ことが十分に可能となっている。

転職は必ず成功する、と言える理由
「転職で対偶が下がる」という点に関しても誤解がある。転職では、内定受諾までに給与などの条件面の提示があるのが一般的だ。むしろ、条件の提示がない場合、相手企業に確認する必要がある。したがって、「自分が」条件をのまない限り、転職において待遇が下がることはない。
つまり、待遇に納得するまで転職活動を続ければいいのだ。中途採用は新卒採用と異なり、時間の成約がない。成功するまで、納得するまで活動を継続できるのが転職活動の大きなメリットだ。したがって「現在の会社よりも確実に待遇が上がる」と確信できたときに転職をすれば、転職にともなうリスクをかなり減らせる。
雇用条件について最低限確認すべき事項

給与と手当について
特に、賞与の有無と昇給、残業について確認してください。手当に関しては通勤、住宅、家族手当がどの程度出るかなど。
勤務地について
最初の勤務地、転勤の有無と赴任する可能性のある場所。
ポストと仕事内容
どんな肩書でどんな仕事をするのか?
休日
ここは注意が必要で、「完全週休二日制(土・日)、祝日」という表現で「土曜日、日曜日、祝日」が休みになります。その他の表現では、祝日が休みとならない場合や休みが土日でないケースがあります。
入社日
その日までに退職できるか?
まとめ
最後に言いたいことは、あなたの理想のキャリアをあきらめる必要はまったくないということである。時代は変わり、その環境が整ってきている。先人たちは、さまざまな理由から「挑戦に踏み切れない」人生を送り、そしてその未練が後悔となっている。
しかし私たちは、リスクを低くしながらも大きな挑戦をできる状況にある。逆に、このような挑戦できる環境にありながら挑戦しなかった場合、将来的により大きな後悔としてあなたにのしかかってくる可能性もある。
